皆さん、こんにちは!
今回は「行動経済学」についてお話ししていきます。現在、職場のコラム集で「7つの習慣」シリーズを執筆中なのですが、「7つの習慣」を「人類の教科書」というネーミングで紹介しています。(いずれ、これのブログでも公開する予定です!)。
世界中のビジネスマンに愛されている「7つの習慣」が「人類の教科書」であるならば、「行動経済学」は「人類の定義」と私は説きます。・・どちらも完全に私の主観ですけどね。
学問の話なので、すべてを語ることは出来ませんが、このコラムでは、「行動経済学」がどういったものであるのかを知り、日常生活や仕事において、どのような影響を及ぼしているのかを紐解きながらお話しします。
そして、「行動経済学」が及ぼす影響を理解し、その上で意思決定や行動を取れるようになると、賢く暮らすことが出来るようになり、対人関係におけるストレスの軽減にも繋がります。つまり、人生が変わります。
今回のコラムは、『行動経済学が最強の学問である』の内容をベースに、池上彰先生の『行動経済学入門』や要約サイト&解説動画の内容を踏まえながら、私の解釈も織り交ぜてお話ししていきます!コラムの中でお伝えしたい内容は下記目次の通りです。
行動経済学が最強の学問である
行動経済学入門
では、早速いきましょう!
「行動経済学」とは?
「行動経済学」とは・・・「人間とは何か」を追究する学問。”人間を知ること”=人類が賢く暮らすために必要なこと。
そもそも「私のようなSEや経済と直接的に関係ない人間が”経済学”を学ぶ必要あるの?」という疑問が湧いたかもしれませんので、最初にお話ししていきます。
【経済は身近なこと ~経済=人間の行動の積み重ね~】
サブタイトルにも記載しましたが、経済とは「人間の行動」の積み重ねで成り立っています。私たちが日常生活を送る中で起こす「行動」によって、経済が回っています。この辺り、モノを買うという行動が分かりやすい話だと思います。
加えて、サブスクリプション(電気・水道・インターネットの他、様々なサービス)に課金するのも、そのサービスを提供する企業や組織が活動するための「経済活動」をしています。なんなら、PC画面の前に座るという行為も、経済活動をして得られた行為と言えます。(PCやデスク回りの備品を購入し、電気・通信費を払った結果)。細かいことは置いておきますが、ここでは「経済は身近なこと」と捉えてもらえればと思います。
【「経済学」と「行動経済学」の違い~合理と非合理~】
「行動経済学」は、人間が起こす行動(経済活動)の意識決定の仕組みを理論化した学問です。言い換えると、「なぜ人はそのような行動を起こすのか?」ということを解き明かした学問であり、「人間が行動を起こすこと・変えること」の動機を追究します。
・・・実は、「経済学」も”人間が起こす行動(経済活動)を科学する”という点では同じです。注目する部分は、”意識決定の仕組み”。つまり、人間の心理的な部分(心理学の分野)を取り入れている点が、「行動経済学」のポイントになります。
経済学では人間を対象としているにも関わらず、人間の心理面を考慮していない点で限界があったのです。詳細は後述しますが、人間の心理面には非合理な部分があります。ここで言う”非合理”とは、「理屈にあってないこと」、「本質的・本来的には誤っていること、そうすべきではないこと」、「どうでもよいこと」とお考えいただければOKです。
サブタイトルの回収ですが、「経済学」=人間が合理的な行動を取ることを前提としています。「経済行動学」=人間が非合理な行動をすることを前提におき、非合理を働く人間の心理的背景を追究します。そのため、行動経済学を知ることで、自分や身の回りの人が起こしている行動に隠された気持ちや背景を考えられるようになります。そうすることで、「なんで、自分(もしくは、アイツ)はあんなワケ分からん事をするんだ!」と苛立つことが減るだけでなく、先回りして良い意思決定ができるように自分や相手の行動を制御することができます。
上が「経済学」寄りの合理的な意思決定をする人です。下が「行動経済学」寄りの非合理な意思決定をする人です。他にも色々な非合理な意思決定パターンがあるのですが、イメージに挙げた通り、「そうは言っても」「でも」「そうかもしれないけど」の他、「だって」「仕方ない」「●●と言えば」などの言葉が出るような意思決定は、行動経済学で解き明かされた人間の行動パターンに該当する可能性があります。その裏に潜んだ心理状況をメタ認知できれば(自分の認知を客観的に捉えることができれば)、自分自身の行動を見直したり、企業戦略にマンマと引っかかって”お布施”を払い散らかすリスクを回避できるかもしれません。
行動経済学を学ぶことは、「人間が何であるか」を追究することであり、豊な人生を歩むための学問といっても過言ではない。と私は考えています。
身近にある「行動経済学」とは?
人類の影の支配者=バイアス・・・バイアスは人間のバグである。しかし、上手く付き合っていくことで人生が好転する!?
「バイアス」とは、これは人間の思考の偏りや偏見、先入観を指した言葉です。もっと広義的に、認知の歪み、思い込み、勘違いを含めても良いと思います。ポイントは、バイアスは無意識的に強く働くという点です。もちろん、意識的にバイアスが働くこともあります。ここでは身近にあるバイアスの例を挙げていきます。
①3つの値段が違う商品
飲食的に限らず、手に取る商品、サブスクの月額コースなどは、3つ以上の選択肢がありますよね。これは企業戦略として、真ん中の値段(コース・グレードなど)を選ばせるための施策であることが多いです。「極端の回避性」(通称:松竹梅の法則)と呼ばれる、バイアスの一種です。
下のイラストのように、見栄を張らせるというのも狙いの1つですが、1番安価なものだと品質面やコストパフォーマンス性に不安を覚えるのが人間です(いわゆる「安かろう悪かろう」の精神)そうは言っても、一番高価なものは中々手が出せない(本当に値段に見合った価値があるのか分からない)。と、悩んだ人に颯爽と現れたように見えるのが、「真ん中の値段」です。 こうして、企業は客単価を上げていくのであります。追い打ちを掛けるように、「真ん中の値段」に”当店イチオシ!”とか”一番人気!”とかを謳っておけば、オートで売れ筋が良くなります。
②顧客のバイアスに蹴散らされた「サラダマック」
皆さんのご記憶に残っているでしょうか。マクドナルドのヘルシーメニューの「サラダマック」。あれは、顧客の声に応えて商品化したメニューだったのですが、ビックリする程に売れなくて世の中から消えてしまいました。下のイメージの通りなのですが、顧客の声 < 顧客のバイアス という結果になったという話です。やはり、バイアスは人類を影で支配する存在だったのです。顧客からは「健康志向を意識した声」が寄せられていたのですが、顧客が持つ”マクドナルドのイメージ”とはかけ離れてしまったようです。
そして、皮肉なことに、その後に登場した肉厚ビーフの「クォーターパウンダー」が人気を博し、「クォーターパウンダー」の肉厚ビーフの系譜は「サムライマック」に繋がっているのでした。
③これはお得だ!と思わせる「●●円引き」の秘密
もしかしたら、個人差が出るかもしれないのですが、↓のパターンのうち、どれが一番お得感がありますか?
A:2,100円
B:3割引で2,100円
C:3,000円→2,100円
全部同じ2,100円なのですが、BやCの方がお得感ありませんか?勝ち組スーパーの「オーケー」では、B+Cで表示していますね。(メーカー希望価格から●●割引で○○円 みたいな)。メーカー希望価格から、どれだけの値引きがされているかを明示することで、お得感を強調するやり方です。このように、一旦、基準となる値段を見せて「あぁ、ちょっと高いな」と思わせてから、本当に売り込みたい金額を出すことで「これはお得になったぞ!」と思わせるバイアスを「アンカリング効果」と言います。
逆パターンで、通常価格のままだけど、「今ならこのオプションも付けちゃいます!」みたいな売り込みも「アンカリング効果」を狙ったものです。「2点お買い上げの方は3点目無料!」とか、「1,000円=100ポイント+60ポイント」とかですね。
「アンカリング効果」は、値下げパターンも、同じ値段に付加価値をつけるパターンも、基準(アンカー)を見せることで、他の情報を評価・判断するために影響を与えるものです。アンカーは船を停泊させるための”イカリ”のことです。
いかがでしたでしょうか。
①③の中では「行動経済学」を駆使した企業戦略を盛り込んでいます。そして、お題目の通り、世界的企業のマクドナルドは顧客の心理状況を汲めませんでした。それ程までに、「行動経済学」は日常にも溢れていますし、企業活動において重要な位置づけになってきています。アメリカでは「行動経済学」を専攻する学部があるそうです。日本にもそういった学部・学科ができるかもしれませんね(既にあるかもしれませんが)
なお、私が①~③の中に盛り込んだ「行動経済学」における心理効果は、以下の通りです。
【バンドワゴン効果】
いわゆる「みんなも選んでいる」という心理的な安心感を得ることを狙ったものです。例えば「当店イチオシ!」、「一番人気」みたいな売り文句のこと。なお、他人と同じことを嫌う(特別感を重視するのも含む)心理状態を「スノップ効果」というそうです。
【損失回避のバイアス】
上記の”バンドワゴン効果”の深層心理にもなるのですが、損失を回避するために、人気商品を選びたい(失敗したくない)という心理・・というか人間の性(サガ)です。あとは、「本日限定!」というのも、「この機会を逃したら損してしまうのでは?」という心理を手に取った作戦です。
ここでは、ナンタラ効果、ホニャララのバイアスという言葉を丸暗記しましょう!ということではなく、「私たちの意識的・無意識的な意思決定は理論付けられている」ということを伝えたいです。つまり、理論がある以上はそのことを学び、生活や仕事に活かせる。ということです。言い換えると、超常現象ではない。ということですね。そこには理由があって、説明ができる。という話です。
仕事の中にある「行動経済学」とは?
では、仕事においてはどのような局面で、バイアスや「行動経済学」で理論づけられている心理効果が、登場してくるのでしょうか。その答えは、”ありとあらゆる場面において、バイアスや「●●効果」が登場する”ということになるのですが、まずは、人間には「認知のクセ」があることを押さえておく必要があります。この「認知のクセ」こそが、「行動経済学」の土台となる原理原則となっています。
【「認知のクセ」 ~人間の思考における”2つのシステム”~】
この「認知のクセ」を研究する学問=「行動経済学」になるので、まずは抽象的に捉えて貰えればOKです。具体的なお話しは後で出てきます。ここでは、人間の認知には「システム1」と「システム2」があるとご理解ください。この「システム1」「システム2」という言葉は、『行動経済学が最強の学問である』から引用していますが、個人的には”直感”と”熟考(じゅっこう)”でイイと思っています。そして、「システム1」(=直感)に「行動経済学」で解き明かされたバイアスや心理効果が出てきます。
この先を読み続ける上での注意点です。
ここから先の論調は、「人間は直感に任せると、このような意思決定や判断をしがちだよ。なので、深呼吸して熟考した方が良いよ。気を付けた方が良いよ」と、言いたげな感じに見えてしまうかもしれません。半分は正解ですが、残りの半分は「生活するのが息苦しくなるから、程々にしましょう」と思っています。
人間は1日に3万5000回もの選択(意思決定・判断)をしていると言われています。その選択の中には、「今日は何を着ようかな」、「お昼に何食べようかな」、「雨が降りそうだけど傘を持って行こうかな」といったものも含まれます。これら全てを熟考していたら、疲れ果てて何もできなくなります。意思決定にはパワーが必要です。そして、意思決定こそ、人間の本領であり仕事人としての力量に繋がります。
余談ですが、Meta社のマーク・ザッカーバーグはいつも同じような服を着ていますし、オバマ元大統領はスーツを3着に限定していたそうです。これは、服装を選ぶということにパワーを使わないようにするためと語られています。私も、同じ理由で新卒入社してから、ほとんどスーツで仕事しています。そして、天気予報のいかんに関わらず、私は折りたたみ傘を常にカバンに入れています。車の中にも傘を2本常備しています。「傘を持って行こうかな?」と考えるパワーと、「傘忘れたけど、雨大丈夫かな?」と心配するパワーを使わないようにしています。土日の昼食は、スーパーの大きいサラダか、丸亀製麺で「明太釜玉うどん」を食べることにしています。外出しない場合はその2択に絞っています。全然関係ないですけど、明太子×生卵は世界一のマリアージュだと思っています。お近くに丸亀製麺がある方は是非ご賞味ください。次点のマリアージュは明太子×マヨネーズです。ファミリーマートの明太子マヨネーズのおにぎりは、中学生の時からこの世で一番美味しいおにぎりだと思っています。
・・・明太子の登場により、話がカオスになりました。
お伝えしたいことは、直感=悪ではない。熟考は大切だけどパワーを使うので、うまく使い分けましょう。ということでした。
【ハロー効果とホットハンド効果 ~アイツならきっと上手くやってくれるだろう~】
ここからは、仕事において発現することが比較的多いバイアスや心理効果に触れていきます。紹介する内容については、意識的・無意識的にやっていることを受け止めつつ、その上でどのように対処していくのかを都度考えるようにしていきましょう。そして、私なりに悪い方向に作用しないためのアクションプランについても話します。
まずは、「ハロー効果」。
例を挙げると、「東大生=勉強が出来る=仕事も出来るだろう」みたいなモノです。対象となる人の経歴(学歴や勤めている会社や職歴など)だけで、拡大解釈する心理効果のことです。他にも、対象となる人の見た目の特徴や性格などで解釈することも、「ハロー効果」の効力と言えます。例えば、ゆっくりと低い声で話す人は「落ち着いている」とか、肌がキレイな芸能人がCMをしているスキンケア商品は「効果がある」とか。ちなみに、ハローはHalo(後光)を意味しているのですが、「Hello」と挨拶した時点でアレコレと拡大解釈をするモノだ。と捉えても良いと思います。
似たようなもので「ホットハンド効果」も併せて紹介します。
この心理効果はバスケットボールの試合中にシュートを立て続けに決めた選手に対して「あの選手がシュートを打てば、また決まるだろう」という思い込み状態に、プレイヤーや観客が思い込んだ(おそらく、選手本人も)ことから由来される心理効果です。つまり、前にも上手くいったのだから、また上手くいくだろう。という拡大解釈です。ちなみにNBA選手のフィールドゴール(フリースロー以外のシュート)の平均成功率は46%前後だそうです。このように「次も成功する」と言い切るには疑問が残る場合でも、人々は熱い期待を寄せるんですね。だからスポーツは熱くなるのです。
「ハロー効果」も「ホットハンド効果」も、意思決定や評価の判断を印象やその場の雰囲気で「こうだろう!」と決めつけずに、一歩引いて、「この場合はどういった振る舞いや効果を発揮するのだろう?」とイメージし、その具体的な根拠を明らかにすることが大切だと考えています。「行動経済学」に関する本ではないのですが、この「ホットハンド効果」について警鐘を鳴らしている主張がありました。詳細は割愛しますが、”成果を褒めることが必ずしも良い事とは限らない。その成果を上げるために過剰な残業や苦労を重ねたかもしれない。運が重なっただけかもしれない。成果だけを褒められた場合、相手は褒められた事は嬉しく思うが、次も同じように結果を出す事に過度のプレッシャーを感じることになる”という話です。
<アクションプラン>
相手の第一印象(経歴を含む)だけで判断しない。これからどうなるのか、どうしたいのかをイメージできるだけの根拠や実績が揃っているかで判断する
【現状維持バイアス・埋没コストバイアス・確証バイアス ~こうして沼に落ちていく~】
サブタイトルが穏やかじゃないのですが、ここでは”変わることができない人”に当てはまることかも?という心理効果を紹介します。私自身も、この心理効果が発現して身動きが取れなかったり、頑固になったりしている部分もあります。正直、耳が痛くなるような内容なのですが、逆に言えば、信念を貫いている。ということが言えるかもしれません。そして継続はチカラです。皆さんの中にも、このバイアスに当てはまる部分があるかもしれませんが、それ自体が悪い事ではなく、一旦、距離を置いて、考えるきっかけにしていただけたらと思います。
まずは、「現状維持バイアス」。”今のままでイイじゃん”、”別に困ってないしな”と結論付けたくなる心理効果です。この「現状維持バイアス」自体は悪ではないです。現状に困っていないのであれば、現状維持をする選択は間違っているとは言えません。ただし、「現状維持バイアス」に依存気味の人は、”本当はこうしたいのだけど、大変そうだからこのままでイイや”といった具合に、出来ない理由・やらない理由が免罪符的に存在する場合、漏らすことなく「じゃ、それで」と現状維持に走る傾向にあります。
幸か不幸か、資本主義が極まり過ぎた今の世界では、成長速度がとんでもないスピードになっています。現状維持が高い水準であっても、アッという間に廃れていきます。私たちとしても、顧客からの期待もガンガン高まり、品質・生産性を高めよ!という要望が飛び交っています。私自身、マネージャーの立場でお客様と接点を持ち、お客様の声を聴く事が増えました。そんなこともあって、一部の管下メンバには「現状維持は停滞ではなくて衰退です」と、発言をしたこともありました。その背景にあるのは、「現状は困っていないし、顧客貢献はできている。でも、もっと何かできることはないかな?」という思いと、自分たち自身の可能性を信じる希望でした。
次に、「埋没コストバイアス」。「サンク コスト バイアス」と呼ばれることもあります(単なる英訳です、sunk cost=埋没費用)。このバイアスは危険度指数高めです。特に、ギャンブルをやる方、課金ゲームをやる方は要注意です。挑戦事をしている人も要チェックです!簡単に言うと、「ここまでお金を使ったからには、ここでヤメられない~」とか、「ここまで時間を投下したからには、もう少し粘りたい~」といったモノで、時間や資金、もしくはその双方を投下したにも関わらず、結果が出ない時に、「撤退すべきか・・いや、むしろここからがイイところだから!ええぃ!!」と、現状維持を肯定する認知の歪みです。
実際に、時間や資金を投下してから、一定の期間が経過しないと成果が現れないことはあると思います。例えば、人材育成はそうですね。いわゆる「石の上にも三年」という言葉があるように、プロとして成熟するには時間を要します。その道半ばで諦めたら確かにモッタイナイ話です。有名なバスケットボールの先生も「最後まで…希望を捨てちゃいかん。あきらめたらそこで試合終了だよ」と教えてくれました。そして、私自身も「成果=生産性(スキル)×投下時間」と言い続けています。
勝負所とこのまま突き進むか、潔く撤退しないと大損を叩くか・・「埋没コストバイアス」では、「ここまでやってきたのだから」という感情が前面に出ている状態で意思決定している。ということで、注意が必要だということをお伝えしたいのですが、同時に、「埋没コストバイアス」に依存しないぞ!という反依存的な気持ちでバイアスに逆らうのも良くない。ということをセットで考えると、より良い意思決定ができると個人的には思っています。「7つの習慣」でも触れましたが、反依存は「自立状態」から一番遠い状態でした。この後、少しでも「自立状態」に近づきながら、意思決定をするアクションプランについてお話しします。
そして、「確証バイアス」。
これも気を付けたいバイアスです。確証バイアスは、自分にとって都合が良い事や、くつがえって欲しくない事。もっと言えば、好みや経験則(特に過去の成功経験)に、固執してしまったり、一部の他者から同意を得られることで、「自分の考えは正しい」と確証を得ているように捉える認知の歪みです。
このバイアスが発現している時に気を付けたいことは、自分にとって都合が悪い事(反対意見など)に目もくれず、聞き耳を持たず、そして歩み寄る発言を言わず・・日光東照宮のお猿さん達のようになってしまうことです。
<アクションプラン>
自分の考えや言動に対して、「メタ認知」と「リフレクション」をする。
「メタ認知」は客観的な視点で物事を認知することですが、バイアスからの脱却にも役に立つ他、行き詰ったときの打開策を出すことにも効果を発揮します。「リフレクション」は、言葉としては「内省」が近いと思います。単純に振り返りや反省をするだけでなく、自分の内面を客観的・批判的に振り返ることや、時には学んだことを手放すことで、新しい知見や情報を受け入れるところまで、「リフレクション」では含みます。とにもかくにも、自分を絶対視しないことがポイントだと考えています。
【計画錯誤・プロスペクト理論 ~見積精度の壁を超えろ~】
ビジネス編・行動経済学のラストスパートです。プロとしての価値が試される「見積」に関するバイアスを紹介します。「見積」は価値あるスキルと私は考えてます。作業時間や費用の見積を依頼されて、「分かりません」と返答するのは当然NGなのですが、正確に見積ができないと自分を含めて多くの人が不幸になります。「計画錯誤」も「プロスペクト理論」も、見積が甘いという結果になるものです。では、具体的に見ていきましょう。
「計画錯誤」は、タスクに費消する時間を甘く見積もる傾向にあるバイアスのことを指します。甘く見積もるというのは、短い期間で対応できると思い込んで強気な(楽観的な)見積・計画をするということです。皆さんの中でも、自信があるタスク、慣れているタスクはあると思います。「これくらいの時間で対応できるだろう」と経験や実績から精度の高い見積ができると思います。しかし、その見積の”前提”はどうなっているでしょうか。全集中でフルスロットルモードに没入している状態で作業する前提になっていないでしょうか。
・うっかりと忘れていたこと
・謎のシステムエラー、メンテナンスによる制約の発生
・一緒に取り組むメンバーからの質問・相談の嵐(中にはギブアップも・・)
・追加タスクの発生(イラストは悪意に満ちていますがその限りではない)
他にも確率の高低があるものの、阻害要因はあります。
「プロスペクト理論」は、人は不確実性がある判断をする時に合理的な価値判断が出来ない場合がある。というものです。「プロスペクト理論」1つでもかなり語ることが多いくらいのテーマですが、ここでは”不確実性”=成功/失敗の確率 と 膨大な規模のモノ と捉えていただければと思います。
成功/失敗の確率に関する「プロスペクト理論」については、人間には「損失回避性」というバイアスがあるので、利益を得ることよりも損失を回避する選択する傾向がある。というものです。例えば・・
①5,000円の食事代を支払う
or
②50%の確率で食事代免除か、10,000円の食事代を支払う
この選択を迫られた場合、①を選ぶ人が多い。というものです。では、次の選択ではどうでしょうか。
①99%の確率で成功する
or
②1%の確率で失敗する
結論としては同じことを言っているだけなのですが、パッと見の印象は違ったのではないでしょうか。なお、これは完全に主観の話になるので、何が正しいというわけではないのですが、私の場合「99%しか成功しないのか」と思ってしまいます。(たぶん、拗らせてしまってますね。しかし、パーセンテージを見せられたら分母を確認する習慣は大事だと思います。)
膨大な規模のモノについては、買い物のシーンを想像すると分かりやすいと思います。下記イラストの通り、同じ100円引き(100円得している)にも関わらず、お得感を得られているかに大きな差が出ています。
見積においても、100人月超のプロジェクトであったり、1億円単位の規模のプロジェクトだったりすると、人日単位・1万円単位の精度で見積の妥当性や損得を判断できない。ということになります。「納得感のある明瞭で精緻な見積をしろ!」、「同じ100円なのだから尊重しなさいな!」という話ではありません。大切なのは、規模の大きいものについては、分解して考えましょう。ということです。判断ができないから諦める。という選択をしないことが重要だと考えます。逆に言えば、規模の小さいものについては、細かく妥当性が判断できるし、厳しい目線でチェックが入る。ということです。
<アクションプラン>
①「ネガティブ」、「ノーマル」、「ポジティブ」のプランを作る
つまり、何の憂いも無くスムーズに進んだ場合(ポジティブ)と、考えられる制約やリスクが発生しても「この期間があれば終わるだろう」という場合(ネガティブ)を考えた上で、その中央値(ノーマル)で進むことを想定していきましょう。ということです。この取り組みで、「計画錯誤」のバイアスで楽観視する傾向を抑止することを目指します。※ネガティブについては、どこまで想定するかがポイントになります。時と場合によりますが、発生率が高いものを想定するのが王道だと思います(手戻りの発生・課題解決に時間がかかる など)
②規模の大きいものは分解する
先述の通りです。コラム「生産性にコミット②(知識習得・理解力向上)」でも触れた通り、世の中の仕組みや事象は「構造」によって成り立っています。対象となるモノの構成要素(構造)を把握し、各個撃破していきましょう。
あとがき 「ナッジ理論」と「互恵性」
長くなってきたので、最後に「ナッジ理論」と「互恵性」について触れて、ようやく筆を置くことにします。
「ナッジ理論」・・・軽くつつく、そっと後押しするという英語が語源。さりげなく巧みに誘導するための理論。
「互恵性」・・・・・人は本能的には「誰かの役に立ちたい」「役に立てたら嬉しい」と思っていること。
これらは、人の協力を得たい場合、お願い事をしたい場合に有効だと思っています。ちょっとテクニックが入っているように見えますが、他者の関心事に関心を持ってよく観察すること。そしてwin-winの関係をより早く、より納得感を出すための後押しをする「人間の本質」とご理解いただければと思います。
今回のコラムで行動経済学に興味を持っていただいたり、有用性を感じてくださったら嬉しいです。人間の心理に基づくので、かなり奥が深くて難しく感じる部分もありますが、学習する価値は大いにあります。コラムタイトルの通り、行動経済学こそ「これからを生きる最強の学問」だと、私個人は本気で思ってます。加えて、具体と抽象の切り替えを駆使して、意思決定や相手とのコミュニケーションの場面で応用できれば、誰一人として漏れることなく、人生が好転することでしょう。まさに最強!そして、盛者必衰の理を覆す絶対王者。それが行動経済学。
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